工事のきっかけ
横浜市青葉区にお住まいのN様より、室内の天井に雨染みができており気になるので修理したい、とのご依頼をいただきました。
点検を行ったところ、バルコニー手すり部分にある笠木や防水層に不具合があり、内部に侵入した雨水が室内へ流れ込んでいることが原因であると判明しました。
笠木および防水層の補修を実施することで雨漏りは無事解消されました。調査から工事完了までの流れを詳しくお伝えいたします。
お客様より「天井にシミが出てきたので確認してほしい」とのご連絡をいただきました。
現地調査を行ったところ、和室の天井部分に雨染みが見受けられました。
一見するとわずかなシミですが、雨漏りの初期段階である可能性が高く、早めの対応が求められます。
さらに、バルコニーの床には汚れや水が溜まった跡が見られ、排水性能の低下も懸念される状況でした。
散水試験と赤外線カメラを併用し、雨漏りの原因を徹底的に究明!
まずは赤外線カメラによる初期調査を行い、湿気の影響が疑われる箇所を大まかに把握しました。
そのうえで、より確実な証拠を得るために、続いて散水試験を実施します。
散水試験では、雨水が侵入しやすい代表的なポイントである、笠木の継ぎ目部分、手すり金物の根元、そして外壁との取り合い部分などに実際に水をかけ、室内側にどのような変化が起きるかを慎重に観察します。
散水開始から数分後、天井面に水分反応が明確に表れ、室内への影響が確認できました。
この反応により、雨漏りの主原因が笠木上部の防水不良であることが確定しました。
調査には、当店が採用しているFLIR社製の高感度赤外線サーモグラフィカメラを使用しています。
赤外線カメラは、人の目では判別しづらい微細な温度差を解析し、内部に浸入した水の経路を可視化できるため、雨漏り調査の精度を格段に高めてくれる非常に信頼性の高い機器です。
実際の解析結果では、散水後のバルコニー笠木まわりに明確な温度差が映し出されており、内部で水分が滞留している印象的なサインが確認できました。
これは、雨水がその部分から侵入している強い証拠となります。
総合的な判断として、笠木内部に雨水が入り込んでいる可能性が極めて高く、雨漏りの原因は笠木内部からの浸水であるという結論に至りました。
雨漏りの原因が笠木部分にあることが調査で明確になったため、お客様より笠木内部の防水補修工事をご依頼いただきました。
まずは工事の第一工程として、笠木を慎重に取り外し、内部の劣化状況を細かく確認しながら、後続の作業に必要となる準備を進めていきます。
今回の笠木は手すりと一体化したタイプであり、構造的にも複雑な造りとなっているため、取り外しには専門的な知識と高度な技術が求められます。
無理に力を加えると破損のリスクがあるため、一本一本のビスや固定金物を丁寧に外しながら作業を進めました。
笠木を外した内部を確認すると、コンクリート天端には大きな隙間やクラック(ひび割れ)が複数見つかりました。
これらの隙間が雨水の浸入経路となっており、内部に水が入り込んで室内へ漏れていたことが改めて裏付けられました。
また、笠木の天端にはFRP防水が施工されており、もともとはしっかりとした防水構造が施されていましたが、長年の使用による経年劣化により、部分的にFRP層が割れている箇所が確認されました。
こうした割れ部分では防水性能が弱まり、十分に機能を果たせていない状態となっていたため、早急な補修が必要な状況でした。
今回の雨漏り修理では、笠木内部に本格的な防水施工を行い、再発防止のための強固な防水層を作り上げました。
使用したのは高耐久で評価の高い防水材「ブルーフロンバリューDX」です。
主剤と硬化剤を現場で適切な比率で混ぜ合わせて使用するタイプのプロ仕様防水材で、一般的な防水材と比較して経年劣化に強く、外部の過酷な環境にも長期間耐えられる優れた性能を持っています。
施工にあたっては、まず最初に下地の状態を整える工程からスタートしました。
コンクリート天端に見られたクラック(ひび割れ)を細かく補修し、凹凸があった部分は段差を調整して平滑な面をつくり、防水材がしっかりと密着するよう準備します。
その後、防水材を均一に丁寧に塗布していきます。
特に、継ぎ目部分や金物まわりといった水が侵入しやすい“弱点箇所”については、念入りに重ね塗りを行い、より確実な防水性を持たせました。
こうして防水層をしっかりと形成することで、今回雨漏りが発生した同じルートから水が入る心配を根本から取り除き、長期的に安心してお住まいいただける状態へと改善しています。
防水層が十分に乾燥し、強固な状態となったのを確認した後、取り外していた笠木を元の位置へと丁寧に復旧していきます。
復旧作業では、笠木を単に戻すだけではなく、固定金物の締付け状態や設置位置を細かく確認し、わずかな隙間も生まれないよう慎重に組み直しを行いました。
これにより、構造的な強度を確保するとともに、新たな雨水侵入リスクを最小限に抑えています。
さらに、ジョイント部分には新たにシーリング材を施工し、隙間を完全に塞ぐことで防水性を大幅に向上させています。
この一連の復旧作業によって、笠木は補修前よりも高い防水性能を備えた状態となり、安心して長くご使用いただける仕上がりとなりました。
施工前に、まずは清掃を行います。
箒で綺麗に掃いてから、高圧洗浄機を使って細かな汚れまでしっかりと落としていきます。
清掃を十分に行ったらカチオンを塗布していきます。
防水工事を行う際、基盤となっているコンクリートやモルタルは、表面がマイナス電荷を帯びており、いわゆる「アニオン(陰イオン)状態」になっています。
この状態のまま通常の材料を塗布すると、素材との密着力が弱くなり、後々剥がれや浮きといった不具合が起こりやすくなります。
そこで重要になるのが、プラスの電荷を帯びた「カチオン性」の塗料や下地処理材を用いるということです。
カチオン性材料は、アニオン状態のコンクリートやモルタルと電気的に引き合う性質を持っているため、互いが強く吸着し合い、塗料がしっかりと下地にくっつきます。
つまり、マイナス(アニオン)とプラス(カチオン)の電気的な相性を利用することで、塗膜の密着性が飛躍的に高まり、防水層の耐久性も向上するというわけです。
防水工事の仕上がりを左右する重要なポイントのひとつなんですね。
カチオン塗布後、プライマーを塗布していきます。
防水工事において、プライマーは下地づくりに欠かせない非常に重要な材料です。
下地となるコンクリート・モルタル・金属などは、そのままでは表面に微細な凹凸やほこり、油分が残っており、防水材がしっかり密着しない場合があります。
そこでプライマーを塗布することで、下地の状態を整え、接着力を大幅に高める役割を果たします。
プライマーは防水層と下地を“橋渡し”する接着剤のような働きを持ち、剥離や浮きといった施工不良を防ぐためにも欠かせません。
また、下地の吸い込みを抑える効果もあり、防水材を均一に仕上げられるという利点もあるんです!
防水工事において、床と立ち上がりの交差部分である「入隅」は、構造上どうしてもひび割れや隙間が生じやすい弱点になります。
入隅は建物の動きや温度変化の影響を受けやすく、わずかな動きでも割れが発生し、防水層の破断につながるリスクが高い箇所です。
そこで、防水施工前にシーリング材を充填しておくことで、この角部分の隙間をしっかりと埋め、後から施工する防水材との密着性を高めます!
また、入隅が滑らかに整えられることで、防水材を塗った際に膜厚が不足したり、気泡が入り込むトラブルも防止できます。
入隅シーリングは、防水層の耐久性を大きく左右する下準備として欠かせない工程なのです。
ウレタン防水の通気緩衝工法では、「通気シート」を敷設する工程が非常に重要です。
その理由は、既存の下地に残っている水分や湿気を逃がすためです。
コンクリートやモルタルは完全に乾燥するまで長い時間が必要で、内部に湿気を閉じ込めたまま防水材を直接塗ってしまうと、内部の水蒸気が膨張し、防水層が膨れたり剥離する原因になります。
通気シートは下地と防水層の間に「空気の通り道」をつくり、内部の水分をゆっくりと外へ逃がす役割を果たします。
また、クラック追従性が高まり、建物の微細な動きによる防水層の破損を防ぐ効果もあります。
防水を長持ちさせるうえで欠かせない工程です!
まずは1層目のウレタンを塗布していきます!
ウレタン防水は、下地と防水材をしっかり密着させるために層を塗り重ねて行います。
というのも…通気シートの上には細かな隙間や凹凸があり、そのまま防水材を塗ると気泡が入ったり、防水層が均一に形成されにくくなります。
そのため、1層目で薄くウレタンを塗布することで、表面の細かな穴を塞ぎ、防水材がしっかり付着するための“土台”をつくるのです。
また、1層目は防水層全体の強度を高め、次に塗る2層目のウレタン材が滑らかに広がるように整える役割も果たします。
最終的な防水性能を高めるために欠かせない基礎となる工程です。
ウレタン塗料を床面へ塗布する前に、脱気筒を設置します。
脱気筒は、下地内部に残った湿気や水蒸気を外へ逃がすための装置で、通気緩衝工法では必須のパーツです。
コンクリートやモルタルには乾ききらない水分が残っていることが多く、そのまま防水層を覆ってしまうと、内部の水蒸気が膨張することで“膨れ”や“剥離”が発生し、防水層が早期に破損する原因になります。
脱気筒は下地から上がってくる水蒸気の出口となり、防水層内の圧力を安全に逃がすことで、防水材の膨れを防ぎます。
つまり、長期耐久を保証するための安全弁のような存在で、防水層を長持ちさせるために極めて重要なのです。
続いて、2層目のウレタンを塗布していきます!
1層目だけでは防水膜の厚さが足りず、紫外線や温度変化、歩行のダメージに十分耐えられません。
2層目を施工することで膜厚が均一になり、伸縮性・防水性の両面で性能を大きく向上させることができます。
また、1層目の微細な凹凸を完全に覆い、平滑な仕上がりをつくることで、水の滞留を防ぎ、耐候性も高めます。
最終的な防水性能を左右する、最も重要な塗り工程といえるでしょう。
トップコートは、防水層を紫外線・風雨・摩耗から保護する“仕上げの保護膜”としての役割を持ちます。
ウレタン防水材そのものは紫外線に弱く、トップコートを塗らないと急速に劣化し、ひび割れや硬化が進んでしまいますが…トップコートを塗布することで、防水層の耐久性を大幅に向上させ、長期間安定した防水性能を維持できるようになります!
また、表面が滑らかになることで汚れが付きにくく、メンテナンス性も向上します。
5〜7年ごとのトップコート再塗装によって防水層の寿命を延ばすことも可能ですので、防水工事をご検討中の方はぜひご相談いただければと思います!
無事に笠木の雨漏り修理と防水工事が竣工しました!
これで笠木からの雨漏りは解消され、防水層からの雨漏りの不安も払拭することができました。
今回ご紹介した事例のように、バルコニーは、笠木や防水層のわずかな劣化が雨漏りにつながることも多く、一見すると気づきにくい箇所に原因が潜んでいるケースが少なくありません。
だからこそ、雨漏り修理では「正確な原因追究」が何より重要です。
当店では、赤外線カメラを用いた高精度な雨漏り調査から、防水工事・修繕まで一貫して対応しております。
バルコニーの雨漏りでお困りの方、原因が分からず不安な方は、ぜひ雨漏り専門赤外線調査.comにお任せください。
確実な診断と丁寧な施工で、大切なお住まいを守るお手伝いをいたします!
まずはお気軽にお問い合わせください。